だって資本金ねぇんだもん。ゼロだもん。

在庫が持てなくなったから？

在庫入るじゃん。
そいで、システムよく知らねぇからよ。

岐阜に出張に行ったときに、
レジの打ち方を教わったぐらいで、
本屋のやり方の詳しい内容なんて、
全然、知らないじゃん。

営業やってたわけだから、

売り上げさえ上げてりゃ、
良かったんだけど、

テメェで店始めたら、

全然、話が違うじゃん！

あの店の棚を、
いっぱいにするだけの金が、
足んなくなっちゃったんだ。

足んなくなったじゃない！

最初から何にもない、
金ねぇんだから。


それで、50万はあったんだよ。

50万のうち30万は、

店の左半分に、
ちょこっと文房具も置いてたんだけど、

文具のやり方ってのが、

一番最初に入れた分は、
全部払わなきゃいけねぇんだ。

それだけが、
文具の約束なんだよ。


そんなもん知らねぇと。

いわゆる資本金が要るわけだ。

そん時に30万払ったわけだよ。


で、残り20万。

オレんちの売り上げが100万。

そん時に、
中央社の偉いやつに言われたの。

「小林さん、商売始めたらね、
売り上げの3倍資本金がないと、
出来ませんよ。」

って言われたの。


100万売り上げたっていうことは、

300万必要だったわけ。


それなのに20万しかないわけだよ(笑)
3ヶ月目に、
そりゃ詰まってくるのは当然。

どうしたの？

3ヶ月目の集金に来たやつにさ、

「ざけんじゃねぇ、ばかやろう！
注文したもの送ってきやしねぇで、
冗談じゃねぇ！こんな金なんか払えるか！」

ってたんかきっちゃった。

しっしっ(苦笑)

「オレは金がねぇけどもさ、
でも、冗談じゃねぇ！」

ってすっぽけた。


そしたら、

「いやいや、小林さん、
そういうの初めてです。」って。

そうだろうね(笑)

すったもんだしたらしいよ。

結局、12月に始めて、

1月2月には、
詰まっちゃったわけだよ。


相手がいろいろ言うから、

「オレはあちこちで、
ギャンブルやったりね、
飲み歩いたりね、
女連れて歩いてるわけじゃないんだ！

オレはマジメにやってるのに、
金がたんねぇんだ！

しょうがねぇじゃねか！
ねぇもんはねぇんだから！


一ヶ月待ってもらえば、なんとかなる。」

って言って。

で、一ヶ月、中央社は？

また普通にはじまったんだけど、
昔は集金に来てたわけよ。

それもさ、
15日と30日の2回来んだよ。

大変だ。

あっという間だもんね、
2週間なんてね。

大変だよ。
金貯まってる暇ねぇじゃんかよ。

15日はある分だけ払えば、
ガマンしてもらえんだけど、

ところが月末なると、
そうはいかねぇんだよ。

だから、
「おふくろ、貸してくれ。」って(笑)

2万や3万ぐらいなら、
貸してくれるじゃない。

すぐ戻せばいいんだから。

それが3年ぐらい続いたかなぁ。

借りちゃ返し、借りちゃ返し。