知人、変人なんでもいいんだよ。
それで、オレは小川宏しか知らねぇから、

んで、小川宏のとこ行ったら、
覚えててくれてさ、
「いいですよ。私の名前使ってください。」
っていうんで、

「推薦人　小川 宏」って、
志願書を自分で書いて出して、
試験受けに行ったわけ。

自分で書いたんだ(笑)

8次試験まであったんだけど、

オレ、4次試験までいったんだよ。

たいていの人は、
4次まで行くって事？(笑)

いかねぇーよ！

800人受けて、
残ったの十何人だったんだよ。

あーそう！優秀じゃん！

4次試験は、
アナウンス室みたいなところで、
原稿を読めって言うんだよ。

それがくだらねぇ原稿でさ、
今思えば、
「ふざけんじゃねぇ！」って帰ってりゃ、
受かってると思ったんだけど、

くそ真面目に読んじゃってさ。

それでダメだったんだけど、

ということで、
マスコミに行きたかったわけ。


それでその後、
就職部に行って探してみたら、

中央公論、校正　　　35000円
岩波書店、社員募集　55000円

とかって出ててさ、

普通のところの給料は、
2万円いけば、いい就職だったわけ。

そこへ3万とか5万とか出てるわけ？

そう、すげー！と思ってさ。

その次に、
「暁教育図書」ってのが出てきたわけ。

そしたら、25000円なんだよ。

なんとかいいだろうと思って、
そこ受けたら、受かってさ、

暁教育図書っていう、
市谷の出版社に勤めたの。

何を出してる本屋さん？

いわゆる一般の本屋に出すんじゃなくて、

学校関係の参考書とかの出版社にいたの。

そこで何をやってたの？

営業だよ。

4月に拝命して、
岐阜の担当になったんだよ。

そこで、
地元の本屋のオヤジに気に入られて、
まあ、いろいろあったんだけど、

結局、ひと夏過ぎた時に、
売り上げ見たら、
オレんちがダントツだったわけよ。

敏腕営業マンだ！

そして、秋になったら、

課長が、

「てめぇ、何やってんだ！」
って電話かかってきたんだよ。

新入社員が春の一期だけ行ってさ、
今までにない売り上げ上げたから、
課長がビックリして、電話かけてきて。

そんなつまらねぇ会社にいるのが、
バカらしくなってさ。

ざけんじゃねぇーよ！


その後も、
他のことで、いろいろあって、
あんまりバカらしいから、
どうしようかなと思っていたら、

オヤジから電話かかってきて、

「近所に土地買ったから、
本屋やらねぇか？」

って話になって、

その時に、
たまたま、岐阜の本屋が、
中央社で取引してたわけよ。

中央社っていうのは、本の卸し？

問屋のことを、
我々の業界では、
「取次ぎ」っていうんだけど、


岐阜の本屋が、

「小林君が本屋やるなら、
中央社を紹介してやるよ。」

とんとんとんって話が進んじゃって、

そんで、９月に会社を辞めたのかな。
それから店、出したんだよ。

なんで、
お父さんは本屋をすすめたの？

本屋に勤めてるからかい？

岐阜の本屋の話もしてたし、

向いてんじゃねぇかと。

そうそう、
ちょうどいいんじゃねぇかと。

しかし、一号店はひでぇ場所だった。
川が二本走ってんだ。

入りにくいんだ。

そこの道路をタクシーが通ると、
ウチが揺れるんだよ。

舗装してないし、ぐっちゃぐちゃで。

蕨高校の通学路で、
大学3年の時に、
そこの奥の田んぼの中で、
ホルンの練習してたんだ。

それも許されるような場所だったわけよ。

で、そこでおっぱじめたわけだ。

それで、そこへ店を建てて、
42年の12月の8日に、
始めたんだけどもさ、

どうだったの？

ひどいもんだったよ！！！


３ヶ月目にさ、
金払えなくなっちゃったんだよ。